先輩×後輩


フッ


俊くんがこちらに振り返ったと同時に、まわりが一瞬にして暗くなった。



「え、何、停電?」

「…ばか。映画始まる」



あ、そ、そっか…


あたしたち、映画見に来たんだった。


それなのに、停電って…


なんとも恥ずかしいセリフを言ってしまった。


そのとき…


――ぎゅ



「…え」



暗い中でふわっと現れた、温かい温もり。


あたしはそっと手元を見た。


この温もりは、もちろん…



「…俺の、だろ」

「え?」

「…他の男の話すんな」



暗くてよく見えないけれど、俊くんがそう言ってる。


あたしに、そう言ってる。

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