御主人様のお申し付け通りに
吸った煙を静かに吹いて、流し目をして私を睨み付けた。

「俺、あのオンボロアパート壊して、貸し駐車場にしようと思ってんだ」

「嘘でしょ?」

じゃあ、私はどっちにしろ追い出されるの?

話が違うじゃないか。

だったら、私はバカみたい。

自分の首を締める事になるって言われて条件通り、コイツに逆らわないで素直に言う事を聞いてきてさ。

「マジだけど、どうする?おまえ」

「こ、困るよ。取り止めてよ」

私は永田の布団にくるまる。

「そこでだ」

ヤバイよ、コイツ。

また閃いたって顔してる。

怖いわーーーっ!!

「ち、近寄らないでいいから、そこから話して」

私はまた何かされる、いや何かしろとか命令されるのが嫌で、布団の中にもぐった。

「親元にも戻れない、元旦那に食繋ぎで、恥をさらして生きているおまえに俺からの提案」

「いらんいらん!提案しなくていい!」

ベッドの端に永田は座って、もぐっている私にわざと力を加えて、もたれてきた。

ぐるじーーーっ…。

「俺と一緒に住むってどう?」

俺と?

一緒に?

住むだと?!

「ヒェーーーッ!勘弁してよ!鬼畜野郎と住んだら精神病になる!!」

「はい、決まり」

断ってんのにさ、全然私の意思は尊重されないのだね、コイツには。

「今月中に返事くれって言われてるから、おまえも今月中に俺に返事くれよ」

ちょっと、ちょっとぉ。

声がやけに弾んでない?

「どうするよ、トシコ?」

私は苦しくて布団の中から、やっぱり出る。

「ブハッ!苦しいじゃん、わざと押さえ付けてたでしょバカ!」

「自分でもぐったんだろ?そうやって、自分が選択した事が苦しかったからって、身近な人間のせいにすんなよな」

…ううっ!…イヤミか、今の。

でも、それは正しい事が痛い。

「そもそも、おまえは人に自分に物事に甘え過ぎて、世の中の仕組みをナメてやがる。その証が離婚、さらに生活が苦しい癖に、ラクで自由のきくパート勤め、それから優しい管理人の計らいで、家賃を半分以下で生活させてもらっている」

コイツ、どんどん毒を吐くな。

お喋りな男は、嫌い。

「鬼畜野郎に説教されたくない」

「キチク?鬼畜野郎だと?この俺を」

コワッ!…怖い、やっぱりコイツの視線は蛇のようだ。

心臓が止まる。

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