御主人様のお申し付け通りに
水曜日、土曜日が私の仕事休み。

それも、永田に決められた。

「俺の休みに合わせろ、そうしなければ自分の首を締める事になるぞ」

と、半ば脅し口調だった。

まぁ、確かに。

そのおかげで、トイレや洗濯機も貸して貰えるから、いいんだけどね。

他にも言われた。

「俺の所有地に許可なく他人を入れたら、自分の首を締める事になるぞ」

って、友人を部屋に呼ぶなって意味なんだろうけどさ。

誰がこんなオンボロな部屋に呼ぶかー!っての。

あとは、

「俺の話を外でペラペラ話したら、自分の首を締める事になるぞ」

だとかね。

だったら、悪口言われないような態度しろ!
って思うんだよね。

寝そべって、窓の外の永田の家を見る。

そんなアイツは、お爺さんの話によると、私と同じ歳。

暗い性格してるんだよね、陰湿っていうの。

オタクみたいな。

電気工の会社に勤めてるらしくて。

なんか、頭が固いっていうか、片寄ってるっていうのか。

とにかく、ひん曲がった嫌な性格してるんだよね。

でも、地主の金持ちのお爺さんの孫だからか、あの歳で一人で立派な一軒家に住んでいる。

あんま実は苦労してない男なんじゃないかな。

どうでもいいけど。

色白の薄い女みたいな肌をしていて。

地味にしぶい黒髪の短髪。

キリッとした上がり眉は、ちゃっかり手入れしているのか細目にカットされている。

つり目の一重まぶた、睫毛は真っ直ぐと長く伸びてて。

口唇はいつも、一直線に閉じられている。

声もセクシーで誘惑するような甘く低い声。

小顔で肩幅があって、モデルみたいな容姿なのに。

メチャクチャ、メチャクチャ、メチャクチャ!!

最悪なのが、実に勿体ない。

月に10万以内のお給料。

パート勤めだから。

家賃は15000円。

光熱費20000円。

食費15000円。

国に支払う料金が30000円。

スマホ料金15000円。

ガハッ!…キツイ。

何も残らない。

残るどころか、貯金まで手を出している。

怒っているとは言え、母が時々私に野菜を送ってくれるから、とても助かっている。

離婚したとは言え、別れた旦那が心配して夕食をおごってくれたり。

だから、永田の言う通り。

今でも甘えてる。

自由って、一人って、とんでもなく金が掛かるという事を知った。

貧乏生活だ。

自分らしさと引き換えに。

自分を犠牲にしたくないだなんて。

生きていくためには、自分を犠牲にしなくては生きて行けないのだと知った。

それが、自分のためか、人のためかなだけだと、知った。

今晩は、母が父に隠れてコッソリ送ってくれたホウレン草を電子レンジでチンして、ゴマ和えして、お味噌汁とご飯で食べる。

感謝はしてるよ、お母さん。


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