御主人様のお申し付け通りに
…あっ!

「有ったよぉ~♪」

ズボンの中側の小さなポッケに入っていた。

「ほら☆」

鍵を永田の顔の前でチラ付かせると、何故だか睨み付けられた。

「…てめぇ!俺のアソコ、今握ったろぉ!!」

…ダメだ、コイツ。

完全に酔い潰れてる。

私は永田を支えながら家の中へと入った。

慌ててトイレに駆け込み、漏らす前にトイレで吐き続けていた。

「ウオェッ…ウェッ…ゲロゲロゲロッ…」

汚い男。

どこが、自慢の孫なんじゃい。

私は台所で、水をコップに注いで、トイレの中の永田に飲ませた。

よほど気分が悪かったのか、水を飲んで何度も深呼吸をして、うつむいていた。

「永田、本当に大丈夫?」

「…横になりてぇ…」

急に素直じゃん。

デカイがたいの永田の手を引っ張り上げて、私は潰れそうになりながら、永田を部屋へと連れて行った。

ベッドに横になって、子どもみたいにうつ伏せて布団の上で、何だか知らないけど、もがいている。

「んにゃぁぁ…んーっ…クソッ!…うにゅぅぅ…チクショ!…」

やっぱり変な奴だ。

でも、あんな一面があるだなんて…意外。

「おい!…こっち来い!…早く来いってんだ!」

あっち行けって言ったり、触るなとか言った癖に。

相変わらず、ムカツク男。

「何?」

私は近寄る。

「おまえに言っときたい事がある!」

永田は私の腕を強く引っ張って、また私の顎を鷲掴んだ。

「何なの?」

顔を近付けて、鼻の先がぶつかる。

もしかしてキス?

「てめぇなぁ、自分の言った言葉は責任持てや」

真剣に永田は私を睨み付ける。

「はぁ?」

うっざぁ~…。

酔っぱらいに説教されるんか。

だから、私は半笑いして睨み付けてやる。

「約束は守れ」

……えっ。

「人が決めた約束は守れない時もある。だけどなぁ、自分が決めた約束は守れってんだよトシコ!」

……うぐっ!

もしかして、元旦那と会って朝帰りしたの、怒ってる?

「わ、分かった。それは、ごめんなさい」

私は怖くなって、逃げようとした。

だって、何だかコイツ。

泥酔いしてるのに、凄いシラフな言葉言うから。

「離さねぇぞ、俺は」

逃げたい。

早く、ここから逃げたい。

今夜の永田は、いつもより更に危険度が高いもん。

「絶対離さねぇぞ!」

痛い、さっきから腕の骨が折れるくらい強く握られてる。

アザできちゃうよ、こんなの!

お爺さん、あなたの孫はかなり危険な孫だよ。

全然、知らないで誉めちぎるんだから!

嘘つきーーー!!!
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