御主人様のお申し付け通りに
「…くぅ…ん…」

寝返りをうって、布団からお尻を晒す。

そんな姿は、私にだけ見せていた訳じゃなかったんだ。

私は膝を抱えて、更にうつむいた。

「…トシコ…どうした?…こっち来いよ?」

永田の優しい声がした。

「どうした?何て顔してるんだ?」

まだ半分だけ片目をつむって、寝癖だらけのボサボサ頭で私の方を見る。

「…おいで?」

私は、急に距離を感じちゃって。

慣れ慣れしく近寄れない。

「なんだよ、言う事聞かないと怒るぞ?」

…やだ。

こんな事で怒られたくない。

私は仕方なく立ち上がり側に寄ると、布団をガバッと捲って、その中へと引きずり込まれた。

後ろから抱き締められたかと思えば、私の動きを封じるように押さえ込まれた。

「い、痛いってば!」

胸を鷲掴みされたから、

「やはっ!嫌ってば!」

私は抵抗するんだけど、力まかせに私を抱き締める。

「バカ!止めて!」

嫌がると、いつもならすぐ手を止めてくれるのに、無理矢理続けてくる。

そして、低い声で言ってきた。

「どうして急に、そんな辛気臭い顔してるんだ?」

「べ、別に」

「言え」

「言わない」

「言えって」

「言わないってば」

はっ!

言わないって…、言えないでいる事がバレた…。

どうしよう。

「言えよ」

「永田こそ言ったら?」

「は?」

私は睨み付ける。

何、強気で私に偉そうに命令すんのさ。

あんたの秘密を、中途半端に知ってしまったのがショックなのに。

「永田の秘密」

私は横目で、背後に居る永田に、更にきつく睨み付けた。

「あぁ?!俺の秘密?」

永田はちょっとだけ怒った顔して、私に対して覗き込んだ。

数分間、また見つめ合う。

……。

というのか、睨み合う?

……。

私は永田の腕を振り払った。

「あんた私を一体この家に入れて、最終的にどうしたい訳?」

「一緒にいたいだけ」

「違うってば!悪いけど、私はバツイチでも、あんたと違って結婚なんて二度と御免なんだから!」

私は永田の胸を遠ざける。

「好きとセックスは同じでも、結婚とかは絶対に違うから!」

「はぁ?」

「あんた結局、寂しいだけの男でしょ?奥さんと別れたかなんかして、寂しくて女抱きたいだけじゃないの?」

「……」

ほら、もう黙るんだから。

何で黙るの…?
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