御主人様のお申し付け通りに
永田という、容姿も性格も文句なしの男が、妻に一週間で逃げられてしまうのは、彼にも申し分のない欠点が有ったのでしょう。

彼はそこで、そんな出来事があったからこそ、逆に相手に対して、臆病ながらも優しく思いやる心が持てたのだと思うのです。

彼のモデルは私の永遠の片想いの男性なのですが、彼は私と少し似ていて、言葉や、態度は極めて、ひねくれ者。

しかし話し込むと、根本に自分の意思もありながらも、必ず最後まで相手の話を聞く事。
そして必ず相槌をうつ事。
更には相手の目を一寸足りともそらさずに聞き、自分自身の話もするのです。
否定的な言葉は、自分の話の時だけ。分かりやすく例えの事例を出して、相手の隠している真意となる悪を引き出して、抜き取ろうとしてくれる。

心の声を、聞いている。

心の動きを瞳で探られているように。

抜き取られて、最後には話してよかったと思える満足感を、得られる。

そんな基本的な要素で、相手を安心感へと導いていく。

謎めく部分もありますが、私には優しくて思いやるのある人だと感じました。

私はそんな男性が、結婚する相手の理想的男性像なのではないかと思ったのです。

そして、宝物はいくつもある訳ではない。

たった一つの自分の定めた宝物だけを、徹底的に大切にする。

そのためには、自分をいくらでも犠牲にできる。

その人を見た時に、私はそういう人なのではないかと思ったのです。
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