-The Real Me-
「ま、まさか多重人格……?」

 震える少女を見て、中条は思わず後退りしそうになるのを堪えた。

「その時の治療の為に半年前、君たちはここへ来たんだ。にわかには信じられなかったよ……“母親”としてのもう一人の君を見るまでは…」

「よ…吉野……」
 信じられないのは中条も同じだった。目を見開いて震えている少女に、何も言葉をかけられないことが、中条は悔しかった。

「‘隔離性同一性障害’通常、治療としてバルビタールなどによる麻酔面接、睡眠療法が用いられるが、私が治療法として選んだのがこの薬だった。まだ国内では認可されてない薬品だが最も可能性が高いと判断したからだ。しかし、治療は途中で打ち切られた……」
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