-The Real Me-
 医師は“母親”との出会い、誕生の経緯を二人に打ち明けた。


「…それが、急に治療を再開したいと、“母親”が尋ねて来たのがお父さんの亡くなる数日前のことだ」

「…でも、何だってまた薬を飲ませようとしたんだよ、ウソついてまで!? “母親”にしてみれば逆効果じゃないのか、消えるんだろ」
 聞いていた少女も、ソレを疑問に思った。

 その質問の問いに医師は戸惑い、少女から目をそらし、静かに答えた。

「ち、違う…この薬は、飲んだ方の人格が消される仕組みになっているんだ。だから、君は薬を飲むほど人格形成が失われていたはずだ。その間、人格は入れ替わっていたはずだ」

 少女は薬を飲み始めてから、今までの事を思い返してみた。

「じ、じゃあ、このまま飲み続けていたら吉野は…」

「…あぁ、間違いなく、人格は消滅する」

 その言葉に少女はゾッとした。冷たい汗が頬をつたって落ちた。
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