淋しいお月様
「いつもの、ですね」

ネームプレートに“若森”とかかれた店員さんが笑顔で言う。

「あ、はあ……。いつもの、です」

嫌に親しく声をかけられ、私は戸惑ってしまった。

ほぼ毎日、この時間帯にこのお店に来ているから、顔を覚えられていたのだろう。

私はいつもの値段のコインを出し、若森さんからレシートを受け取った。

声をかけられてびっくりしたけれど、彼は何事もなかったかのように、バックヤードから出来上がったハンバーガーを袋に入れ、私に渡してくれた。

「いつもありがとうございます……あの……」

「はい?」

「この後、ちょっとお時間とれないですか? お話したいことがあって」

彼は周りに聞こえないように、小さな声で言ってきた。

「お話?」

「時間とれないですか?」

柔らかな口調とは裏腹に、強い意思表示をしてくる。

「時間なら、ありますけど……」
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