淋しいお月様
「いきなり言われても困りますよね。あの、お友だちからでいいので、仲良くしてくれませんか」

若いのに、そんな控えめな申し出。

「お友だちだったら、いいですよ」

私が答えると、彼はみるみる笑顔になった。

「やった。ありがとうございます。僕、若森章平っていいます」

「私は天野星羅です」

「星羅さん、ですか。お名前も素敵ですね」

まあ、お上手。

「ゆっくりお話したいところなんですが、もう遅いし、また今度お会いできますか」

「はい」

「じゃ、僕のアドレス教えるので、よかったらメールください」

そうして、私たちは別れた。

彼の後ろ姿を見送ったあと、一気に気分が高揚してきた。
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