淋しいお月様
ふと、セイゴさんが私の近くに来た。

座っている私の前に、立った。

「キス、していい?」

唐突にセイゴさんがそんなことを言い出した。

「……え?」

セイゴさんの顔が、そっと近づいてくる。

私は無意識で、セイゴさんの口を自分の手で制した。

「ダメ、か。はは」

「……ダメです」

「ごめん。調子に乗った」

「こちらこそ……ごめんなさい。私のこと、色々やってくれてるのに、キスのひとつも許さないで」

「そんなつもりで君の傍にいたんじゃないよ。ほんと、ごめんね。じゃあ……」

そう言うと、彼は出て行ってしまった。

私はこのまま彼を失ってしまうのではないかという、焦りを覚え、瞬時に立ち上がり、セイゴさんを追いかけた。

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