お姉ちゃんの憂鬱

「……。」

「ねぇってば。」



さぁちゃんの低めの問いかけに無言を貫く山城さん。


ぎすぎすとした空気が教室中に張りつめる。


授業開始を告げるチャイムがなったのが聞こえるが、みんな彼女たちのやり取りを見守っていてそれどころじゃない。

固まっている先生も含めて。



「ねぇ!聞いてんの?!」



いまだに山城さんに突っかかっていくさぁちゃんを見て、ついにあたしの悪いクセに火がついた。



「こらこら。二人ともヤメナサイ。みんなが困ってるの分かんないの?」

「え?」「は?」



二人ともきょとんとした顔で突如横から現れたあたしを見つめてくる。


誠がいるからか、それとも2こ下の弟がいるからか、親からの遺伝か、その全てのせいか。



気付けばあたしはだいぶ世話焼き人間になってしまった。



誠と弟はいつもくだらないケンカが絶えないから、こんな風に目の前でケンカされるとついつい口を出してしまう。


関係ない人のケンカなんか放っておけばいいのだが、このままじゃクラスの空気も最悪になる。

それはつまりあたしもその最悪な空気の中で授業を受けなければならないわけで、それは勘弁願いたい。



ということで。

「本村さん。そんなに突っかかってったら山城さんだってイラッとしちゃうでしょ。」


「え、は、はい!」


「山城さんも。むかついたとしても、自分に向けて話してくれる人のこと無視したらダメでしょ。」


「だ、だって…」


「だってじゃないの。嫌いだからって無視していいってことにはならないよ。自分が同じことされたらどう思うのさ」



山城さんの目を見て話しかけると、山城さんもこっちをじっと見返してくる。

まつげながいなぁ。



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