お姉ちゃんの憂鬱

「かな、今日これから暇人さん?」


「今日体育館使えないからね、暇子さんよ?」



その日の放課後、帰り支度をしているとさぁちゃんに声をかけられた。



「そしたらさ、一緒にお茶でもしません?」


「さぁちゃんにナンパされた!」


「ナンパって…ペットくんは大丈夫なの?」


「あー、あいつ夏休みの課題終わってなくて居残りだから気にしないで」



ついでに昼休みも教室外に出ることを禁止されたらしい。

そのおかげで最近昼休みも放課後も静かだ。


…寂しいなんて思ってナイヨ。




「なになに?あたしを置いていくつもりなのかいあなたたちは」


「まどか今日バイトじゃないの?」


「今日は運よくお休みなので、ご一緒よろしい?」


「なんだ、それなら一緒行こ」


「オレも暇」


「ならもうみんなで行こうよ。さぁちゃん、いい?」


「え、あ、うん。いいよ、」



あれ、…なんかさぁちゃん乗り気じゃない?

もしかしてあたしだけに用事だったのかも。



「直江くんも行けるの?」



でもさぁちゃんは何でもないように直くんの姿を探している。

大丈夫なのかな?



「さぁちゃん、あの」


「直江くん、帰らないの?」



帰り支度もしないで席に座っている直くんに話しかけるさぁちゃん。

大丈夫なら別にいいんだけど…



「残念ながら直江は今日まで猶予をやった夏の課題が終わってないから居残りだ。てかお前らつるんでんだからちゃんと面倒見てやれよ。こいつ課題の四分の一も残して堂々と提出しやがったからな」



直くんに声をかけに行くと、胡散臭メガネが現れてため息をつきながらそんなことを言った。

そういえば朝のホームルームでそんなこと言ってたな。



「…一応みんなで勉強会とかはしたんですけどね」



直くん、結局今日までに終わらなかったのね…。


海に行ったあとも二回ほど勉強会を行い、みっちりやったおかげで夏休み最後の一週間を課題に悩まされずに済むという人生で初めての経験をしたあたし。


しかし直くんはその回数では足りなかったようで、未完成のままの提出となったようだ。

というのも、勉強会以外の時間で自分で進めておこうという気持ちが全くなく、ハリーポッターを読破するのにその時間を要してしまったとのこと。


完全に自業自得である。





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