お姉ちゃんの憂鬱
とても冷たい声できっぱりとそう言ったまどかは、グラスの中身を注ぎ足すことなく部屋に戻っていった。
そして再び部屋から出てきたまどかの手には荷物があり、あたしの横を何も言わずに通り過ぎていく。
「帰るの?」
その後ろ姿に声をかけるも反応はない。
「そんな態度したら、あたし余計気にするからね。」
だって気になって仕方ないだろう。
不機嫌の理由ははぐらかすし、かなり余裕ないし、あんなにケンカ腰。挙句の果てに逃走だ。こんな変なまどかを気にするななんて無理な話。
あたしのお節介なんて今に始まったことじゃないので、もういっそのこと開き直らせてもらう。
だってまどかはきっとお節介焼くくらいじゃないと、なんでもはぐらかして誤魔化そうとする。
だからお節介焼くくらいで丁度いいんだ。
あたしの言葉には一切反応せずに、フロントへと向かうまどか。その背中にあるのは拒絶。
先程の会話を思い出すと、お母さんのことをいった直後にまどかの反応は険しくなった。完全にお母さんと何かあったんだろう。
「わっかりやすいなぁ。」
まるで反抗期のような反応をするまどかにため息をつきながら他の4人が待つ部屋へと戻ると、マイク片手に熱唱する誠がいた。
「まどか、なんか用事あるとか言って帰っちゃった。」
「あぁ、そんなこと言ってたの?本当はあたしが怒らせたからだよ。」
「は?何、ケンカでもしたのか?珍しいな。」
「反抗期のお嬢様とうまく会話できなかったの。」
「何言ったの?」
「今朝不機嫌だった理由聞いただけ。お母さんとなんかあったっぽい。」
「あぁー…やっぱりまどかってお母さんの話地雷なのね。」