Love their
第9章―微熱
気が付けば病院の前にいた。


いや、霞む目を凝らしながら目的を持って来たのが本当のところであった。



行き着く先はもうここしかない…。



ぼんやりとした頭の中で彼を頼ってここまで来た。


途中、サトルからのメールは未開封のまま無視した。


もし電話がかかってきたら嫌だとも思ったが、彼からの連絡があった時にすぐに繋がりたくて電源をつけたままにしていた。



結局どちらからも電話はないままだった。



静まりかえった病院の正面玄関の前に自転車を止めてすぐ傍のタクシー待ち用のベンチに腰かけた。


タクシーは2台だけ客待ちをしていた。


こんな時間に誰が乗るのか?疑問の目で眺めていたが時間外受付から出てきた若い女性は迷わずにタクシーに乗り込んだ。


看護師?患者?



次に順番待ちをしていたタクシーが所定の待ち場所にゆっくりと移動してきた。


窺わしそうな表情でこちらを見る運転手と目が合う。


途端にかわされて運転手は持っていた雑誌に視線を落とした。



そりゃそうだ。
私のが怪しい。


こんな時間に自転車で病院まで乗りつけて中に入ろうともせずにタクシー待ちのベンチに腰かけているのだ。

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