chu to lips
「亜紀…こっち。」

佑輔が私をみつけてくれて
軽く手を振ってくれた。

愛しい…恋人、佑輔。

私も小さく手を振った。

待ち合わせ場所から
歩きながら駅に向かった。

いつもと違う道をわざと選んで
少し人通りの少ない場所で
二人で手を繋いでいた。

そして私の足音に合わせてくれる
佑輔の優しさに甘えて、
ゆっくり歩いてみたりした。

相変わらず、疲れた顔してる。
佑輔の仕事を頑張っている姿が
なんとなく観えてしまう。

ギュッと握って、足を止めた。

「…どうした?」

緊張しすぎて…佑輔の顔が
ちゃんと観れなくなってる。

「ねぇ、佑輔のコト、大好きだから…
ガトー・ショコラ…作っちゃった。」

佑輔と手を繋いでない方の…
手袋無しで持っていた手が
とても冷たくなってて

その冷たい手のまま
白い紙袋をそっと差し出した。
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