社長に求愛されました


「弟に頼られる事はあっても、誰かを頼った事はないのかもしれないですね。
なんでもひとりでどうにかしようとして、ひとりで考えて……考えすぎて動けなくなって。
見てて本当にじれったいです」

ついでにと言った様子で、綾子は今度は篤紀に視線を向けた。

「社長との事も、社員全員もどかしく感じてますよ。
社長がちっとも強引にいかないからだって」

急に矛先を向けられた篤紀は、眉を寄せて綾子を見た。

「社長くらいカッコいい男は多少強引でもいいんですよ。
むしろ、高瀬みたいに先の事を考えすぎて立ち止まっちゃうタイプには強気でいかないと、関係進みませんよ。
そのうちふらっと現れた他の男にとられても知りませんから」
「……社員全員同じ意見か?」
「もちろんです。……みんな、社長と高瀬に幸せになって欲しいんですよ。
意固地で不器用なふたりだから」

困り顔で笑う篤紀に綾子も笑みを返してから、静かな寝息を立てるちえりを見つめた。
今回の事で、ふたりの関係がいい方向に変わる事を願いながら。







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