蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~


嫌われてはいないはずだと思うが、それが異性に対する愛情なのか、それこそ拓郎には分からないのだ。もしかしたら、藍自信にも分かって居ないのかも知れない。


それほどに、藍はまだ幼いのだ。


時間は、いくらでもあるのだから、焦ることはない――。


拓郎は、ともすれば暴走しそうな自分の心に、そう言い聞かせる。


「あ、それはそうと拓郎」


「はい?」


「避妊はキチンとしなさいよね。あんたは子供が居てもおかしい年じゃないけど、さすがに十七やそこらで子持ちになったんじゃ、藍ちゃんに気の毒しちゃうから」


「……美ぃー奈ぁーさーん」


だからなぜ、一足飛びにそう言うことになるんでしょうか!?


拓郎は眉根を寄せて、渋面を作る。


「何よその顔。大事なことじゃない」


「それ、まさか、藍ちゃんにも同じ事言いませんでしたか?」


嫌な予感を覚えつつ、拓郎は震える声を絞り出した。


「うん。言ったわよ♪」


ああ、やっぱり……。


がっくりと、肩の力が抜け落ちる。


「素直で、良い子だよねー藍ちゃん。『はい、分かりました』って、可愛いったらありゃしない。思わず抱きしめたくなっちゃうわ。って、抱きしめて頬ずりしちゃったんだけどね。これがまた、肌触りが、すべすべで、もちもちの、ぷるんぷるんなのよねー♪」


「……よかったですね」


もしかしたら、藍の爆弾発言は、この人の魔の手が及んだ結果なんじゃないかと、拓郎は本気で疑っていた。

< 131 / 372 >

この作品をシェア

pagetop