蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

手も足も顔も全てが丸いフォルムで、クリクリと青みがかったつぶらな瞳は、まるでヌイグルミのように愛らしい。


「どの子も、可愛いですね。でも……」


ちゃーの乳を懸命に吸う子猫たちに、最初は楽しげに視線を落とていた藍が、表情を曇らせて声を詰まらせた。


「でも?」


拓郎の問いに、藍は子猫たちの頭をそっと撫でながら、遠くを見るように目を細める。


「何だか、連れて行ってしまうのが可哀想な気がして……」


――子猫を、母猫と引き離してしまうこと。それが可哀想だと、そう言っているのだ。


「まあ、確かにこういう姿を見ていると、引き離すのは可哀想な気がするけどね」


人間に飼われているのでなければ、もう少し大きくなるまで親猫と一緒に居られるのだろう。


まだ幼い子猫を母猫から引き離すのは、確かに心が痛む。


だが、だからと言って、無尽蔵に新しく生まれた子猫を飼い続けることは出来ないのが現実だ。


飼い主は、責任を持って子猫の引き取り手を捜すか、又は、子供を増やさないように去勢手術を施すか、その選択をしなければならない。


猫からすればいい迷惑だろうが、それがペットを飼う人間の責任であり義務なのだと、拓郎は思っている。


だがそもそも、捨て猫だった『ちゃー』と『クロスケ』を拾ってきたのは拓郎なので、偉そうな事を言えた義理ではないのだが。

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