蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

拓郎はもう一度、周辺に見落としている道路がないか、ダッシュボードから道路地図を引っ張り出して、チェックしてみた。


が、研究所に行くには、今いる道しか描かれていない。


距離的には、今居る地点から研究所まで3、4㎞と言った所だろう。


「歩くしかないか……」


一人ごちりながら、拓郎は車のトランクから、カメラ機材一式を取り出した。


ただ『藍さんに会わせて下さい』と訪ねても、門前払いを食わされるのは目に見えているので、拓郎なりに策を考えて来ている。


隠れ蓑は、『雑誌の取材』。


今度も、『雑誌記者』という肩書きを使うことにした。


日翔源一郎に使った手のアレンジだが、今回は雑誌も企画も存在しないので、嘘八百のハッタリ100パーセントの大芝居だ。


すぐにバレるかバレないか。


研究所の所長の名は『柏木浩介かしわぎこうすけ』。


まずは、この人物に会って、それとなく探りを入れてみよう。


上手くすれば、取材の許可はともかく、研究所の中の見学くらいはさせて貰えるかも知れない。


そうすれば、研究所の職員から情報を聞き出すチャンスも生まれるだろう。


分からないからと、そこに立ち止まっていても、どうしようもない。


――そこに、藍がいる可能性があるなら、行くまでだ。


拓郎は、意を決して歩き出した。

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