箱入り結婚のススメ

「はい、さくら組さん行きますよ」


松永先生が皆に声をかけると、ザワザワしていた教室が一瞬にして静まった。
皆、緊張している。


「速水先生、後ろをよろしく」

「はい」


集団行動をすると、ひとりやふたりは間に合わない子が出てくる。
そういう子達を頼まれたのだ。


廊下をずらずらと歩いていく園児達。
皆衣装が似合っていてかわいらしい。

案の定、靴下をはき忘れていた誠君が、泣きそうな顔をして残っていた。


「大丈夫。先生が待っていてあげるからね。靴下履こうね」


私が声をかけると、泣くのを思いとどまった誠君は、やっと靴下をはき始めた。

私達だって緊張するのだ。
こんなに小さな子なら尚更だ。


誠君の手を取って階段を下りると、保護者の姿が数人見えた。
年少と交代で遊戯室に入る年中の保護者だ。

私は小さく頭を下げて通り過ぎようとした。
だけど……。


「あっ」


一瞬小さな声が漏れた。
その中に室賀さんが見えたからだ。

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