箱入り結婚のススメ

「舞、来なさい」


一階から父の声がした。
『今が頑張り時』と室賀さんが言ったように、幼稚園でずっと働きたいのなら、頑張らないと。


「おかえりなさい」

「これか。ひどいじゃないか」


私がリビングに顔を出すと、予想通り父が大きな溜息をつく。


「少しヒビが入っただけです。
これは、ひどくならないようにしていただいただけで……」

「なに言ってるんだ。
今までだって言っていたはずだ。ケガをするような仕事はもうダメだ」


やっぱり……。
思った通りのことを言われて、溜息が出そうだ。


「仕事をしたいのなら他にもあるだろう?」

「私は幼稚園で働きたいんです。これだけはどうしても譲れません」


今までにも似たようなことは言ってきた。
だけど、就職してからここまで強く自分の意思を言ったのは初めてだと思う。


「舞。そんなことを言っていて、全身ケガだらけになって、嫁にいけなくなったらどうするんだ。
毎日泥にまみれて、なにが役に立つというんだ」


父がかなりいらだっている。

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