箱入り結婚のススメ
『それで?』
「それでって……」
『キスとかしたりして?』
「してないわよ」
顔が真っ赤になる。
まさかキスなんて……。
「まだはっきりとはお返事してない」
『はぁ。そんなことだろうと思ったわ』
盛大な溜息とともに、麻子の落胆した声が聞こえる。
でも、無理だから。
告白されていきなりキスなんて、とても私には……。
「それより……」
私は園を辞めるように言われていることと、お見合いのことを話した。
『そっか。箱入りって、大変なんだ』
「箱入りって」
しばらくの沈黙の後、麻子が「そうだ!」と大きな声をあげる。
『お父さんとお母さんは、舞に結婚の見通しがたてば安心するってことよね。
それなら、紹介したらいいじゃない』
「紹介って?」
『室賀さんをよ。一流企業にお勤めで、貿易のお仕事をしてるなんて、最高じゃない』
「でも……」