初デート~12年目の恋物語 番外編(1)~
向かうのは、正面に見えるうちの門ではなく、裏に立つ、おじいちゃんとおばあちゃんの家の門。
そっちの方が駅に近い。
そして、その隣にはカナの家。
でも、今日の行き先は、カナの家ではない。
大きな和風の門を開けて、外に出ると、不思議な開放感でいっぱいになった。
この門を出て、カナの家に行くことはあるけど、それ以外の場所には、思えば、行ったことがないかも知れない。
お出かけは、いつも車で、子どもの頃から、外遊びはお庭だけだった。
近所の公園がどこにあるかすら、わたしは知らない。
中等部の時、子どもたちだけで班を作って、電車に乗って行く社会見学があった。
楽しみにしていたその日は、熱を出してお休み。
一度だけ乗った新幹線は、修学旅行の時。
家のすぐ側を電車が通っているのに、車で送ってもらった。
その時は、何の疑問も感じなかった。
でも、考えてみたら、世間知らずだよね。
「今時、天然記念物みたい」
梨乃ちゃんや亜矢ちゃんに言われた言葉が、脳裏に浮かぶ。
意地悪で言われたんじゃない。
ちゃんと分かってる。
だけど、なんだか、自分が恥ずかしくなっちゃったんだ。
小学生や中学生なら、まだしも、もう高校生だよ。
だから、わたしは、ひとりで電車に乗りに行くことに決めたんだ。