キスしたくなる唇

キスしていい?

怜央Side
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「ソースが付いている」

 それは千秋さんの唇に触れる口実。たしかにほんの少し付いていたが。

 今の千秋さんは化粧がすっかり落ちてしまっている。それなのに、唇はきれいなベビーピンク色。

「えっ」

 固まったように俺の指に拭かれているのが、可愛い。

「あ、ありがとう。寒さで荒れちゃったから恥ずかしい」

 ふと、仕事で彼女にプレゼントしてくださいと、リップグロスをもらったことを思い出す。

 俺は立ち上がると。チェストからグロスを持ってきた。

「仕事でもらったんだ。千秋さん、使ってよ」

 手渡すと千秋さんはキョトンとした顔になる。

「ありがとう。でも、彼女にあげればいいのに」

「彼女がいないから千秋さんにあげるんだよ。保湿効果もあるみたいだからつけてみれば?」

「うん。つけてみるね」

 千秋さんはバッグから化粧ポーチを出して、小さな鏡を出した。

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