愛の言葉-偽り-
○涙の数

「好きだった」

過去形にしてしまうのは
現在形にすることを彼が許さないから


あの時
誰よりも彼を
知っていると感じた
私のなかは
笑みで満ち溢れてた

だけれど
そんなことなどないんだって
彼の冷酷な目が告げた

穏やかだった彼の目は
一瞬にして獣の目になった


そんな彼に私は言う
「好きだった」って
彼は薄く笑い
また私を見下ろした

一筋の涙が頬をつたった意味を彼は知らない

そしてそんな彼はきっと
これからも分かることはない

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