仕事しなさい!
「苦しい」


私は呟いた。


「苦しい」


心が脳にあるのなら、一部をくり貫いてしまいたい。
心臓にあるのなら、えぐりとってしまいたい。

そうやって、須賀渡を私の中から消去したい。

彼がくれた全部を無かったことにして、
また元の世界に還りたい。

粛々と日々を消化する音の無い世界に。


翌日は隣町に足を伸ばし、宿を決めた。
小さなカフェが海岸線にあったので、遅めの朝食をとり、今日もブラブラと海辺で過ごす。

ノースリーブのロングワンピース一枚でちょうど良い気温。
夏は近付いている。

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