仕事しなさい!
「あんなことされたら、男はイチコロだよ?自覚ないでしょう?」


「だって……振り付けだもん」


「ドキドキしました、俺。倫子さんに指さされて、見つめられて。挑発的でやらしー顔してた」


私は恥ずかしいので顔をメニューに向ける。
なんだよ。
ドキッとさせるつもりが、私の方が胸が苦しい。


「倫子さんはイイ女なんだから。自覚しないと、男を惑わす悪女になっちゃいますよ」


「だから……変なこと言わないでってば」


「俺は充分惑わされてるけど。悪女の素質あるよなぁ」


私はぷいと顔をそむけ、店員さんを呼んだ。

イイ女なんて言われたことない。

なんの因果かな。
初めて、女として見てくれたのが、後輩の軽め男子だったなんて。

でも、彼の言葉が、私を見る熱っぽい視線が、
嬉しいと思っちゃう自分が確かにいるんだ……。
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