俺様常務とシンデレラ

そっと私の左脚を持ち上げ、膝のてっぺんに熱い唇を柔らかく押し付ける。

脚の先に向けて優しく滑るキスの感覚にうっとりして目を閉じた。


そして、彼の唇が左足首に触れたとき。


常務の身体が突然凍りつき、鋭く息を飲む音が聞こえた。


私は驚いて目を開ける。

黒い瞳は驚愕に見開かれ、なんだかショックを受けているようにも見える。

心なしか色をなくした表情に、私の心臓もイヤな音をひとつ鳴らした。


「……お前、アンクレットはどうした」

「え?」


常務はゆっくりと私と視線を合わせ、恐る恐る、低い声で尋ねた。

目には焦りの色が浮かび、私の答えを急かすように畳み掛ける。


「いつも同じのをつけてただろ! リボンが付いた、ピンクゴールドのアンクレット!」

「あっ……えっと……」


私はあんまり驚いたものだから、すぐには言葉が出てこなかった。

私がいつもアンクレットを付けていて、しかもそれが毎日同じものだということに、常務は気付いていたんだ。


そしてなぜか、それがなくなったことで、ものすごく取り乱している。
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