俺様常務とシンデレラ

野本さんは少し白髪の混じった髪をキレイに整えて、細身の身体によく似合う黒いスーツをビシッと着こなしている素敵なオジサマ。

優しい目元に見えるいくつかの皺が、彼が経験してきた様々な出来事をひとつひとつ刻み込んでいるようだった。



「本日はウエディング会場をメインに見学されるということでよろしかったですか?」

「はい。案内の方、よろしくお願いします」


王子様モードの常務がにっこりと笑って頷くと、この場の雰囲気も合間って、本物の王子様のように見えてしまう。

フロントで指導を受けていた女性スタッフが、目をハートにしてるのが遠目にもわかる。


違う! 違いますよ!

この人、本当は意地悪だし子どもっぽいしただの甘党だよ!

エセ王子だよ!


と、叫びたかったけど、絶対に誰も信じてくれないと思う。



私は本当の常務のほうが、常務らしくていいような気がするけど、この外面王子モードのほうがいろいろと便利なのはなんとなくわかる。

私も最初の1週間は、王子様な常務に浮かれてウキウキしていたわけだし。



困ることといえば、本当の常務とのギャップに少し戸惑うくらいだ。

だけど常務は王子様モードもよく似合うので、ちょっと我慢すれば違和感もほとんどなくなる。
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