俺様常務とシンデレラ

ぷぷぷ。

常務の顔、ふたつある。

しかもなぜか私の顔を見たら真っ青になっちゃった。


「なにを……?」


私を支えているのと反対の常務の手の中には、いつの間にか、さっきまで私が持っていたカクテルグラスが握られている。


常務が青い顔のままカボチャパンツの男の人に聞いた。

ああ、違う違う。

カボチャパンツは仮想ね。


「これはこれは、大和さんのお連れでしたか。申し訳ない。素敵なレディがひとりでふらふらしていたもので、つい……」

「なにを飲ませたんですか?」


あ、ダメですよ、常務。

ちょっと素が出てるでしょ。

そんなに怖い顔しないでよ……。


「ハンターですよ。ちょっとウィスキー強めでしたけど、ただの一杯です。そちらのお嬢さん、一気飲みしてしまったんですけど……」

「一杯……。ではあなたは、たった今ここで彼女と?」

「ええ、もちろん。ついさっき声をかけたばかりです。どこにも連れ込んではいませんよ」


カボチャパンツの男の人が身の潔白を証明するのを聞くと、常務は心配そうな顔をして、私の髪の後ろの方へと手をやる。

なんだろう、ゴミでも付いてたかな。
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