俺様常務とシンデレラ

夢がはじまる







「ほら、水飲め」

「……もう酔ってないです」

「いいから黙って飲めよ」


常務が変だ。妙に優しい。

あの後、足取りの覚束ない私は、常務に支えられながら会場を出て、どこからか現れた黒い高級車に乗り込んだ。


常務の肩に頭をもたせかけ、キラキラとした景色の中をたくさんの車が滑るように走って行くのを見ていた。


そうこうしているうちに私と常務を乗せた黒い車は、てっぺんが見えないほどの高層マンションの前で止まり、運転手さんが車のドアを開けた。

私にハッキリとした理性が戻ってきて、ちゃんと物を考えられるようになったときには、マンションの最上階にあるただ広い部屋にいた。


私のいる部屋はクリーム色の壁をはじめとして、全体的に優しい色遣いの部屋だった。

間接照明に照らされ、私の肌はオレンジ色の光を帯びている。


白いふかふかのソファに座らされ、そこから見える大きな窓には、柔らかな明かりが灯る夜景が映っていた。



常務はもう外面モードではないはずなのに、このソファまで酷く紳士的に私をエスコートし、壊れ物を扱うようにそっと座らせ、今度は酔い覚ましに水を飲ませようとしてくる。

なんで私をここへ連れて来たんだろう。

心に決めた女性がいるなら、これ以上、私の心を揺らさないで欲しいのに。

あーあ、あのまま酔いが覚めなければよかった。
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