俺様常務とシンデレラ

常務の肩におでこを押し付け、大きな手のひらに背中を何度もなでられると、身体の力が抜けて自然と瞼が落ちる。


「髪も変に乱れてるだろ。……どこで、誰に、何をされた?」


常務が指先に私の髪を絡めながら、耳たぶに唇を押し当てる。


低く抑えた声が直接耳の中に注がれ、私の涙腺の蓋はいとも簡単に外されてしまった。



「ふっ、ふぇー……」


はらはらと涙が頬を伝い、情けない声が唇からもれる。

常務のジャケットをきゅっと握り締めると、彼は私を落ち着かせるように、少し強めに抱き締めて身体をなでさする。


本当は、この腕を振り払うべきなんだ。


私は彼のシンデレラにはなれないのだから。

彼の心の中に別の女性がいるのをわかっていながら、こんな風に縋ってしまうのはすごくかっこ悪い。


だけど私は、本当の恋に落ちてしまったから。


どんなにかっこ悪いとわかっていても、ただ常務の胸に縋り付いて、優しい手のひらが促すままに、ぽろぽろと涙を流すことしかできない。


「な、なんでっ……」

「ん?」


常務は私を腕の中に閉じ込めながら、ソファに押し倒されたせいで乱れてしまった髪に、丁寧に唇を落としている。
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