色のない世界。【上】
鋭くも睨みつけるように女を見つめる、ヤマト。
こんなに賊を警戒するヤマトを見るのは久しぶりだ。
相当な腕を持ってやがる、この女。
「貴様に私のことを明かして何になる?明かしたところで私に勝てるとでも?」
腰に手を当てる女の表情は余裕そのもの。
だが、それが逆に組員達に恐怖を教えさせる。
ヤマトは女に敵わないと分かったのか何も言わずに睨んでいる。
するとそこにやって来たのはレースのエプロン姿の親父。
「…おい、お前ら何やってんだ!玄関前で騒ぐなってあれほど…」
チラッと女を見る。
驚いてる、エプロン姿の親父に。
そして親父も女を見て驚いてる。
親父が驚くなんてめったにない。
裏の顔だった親父が急に表の組長の顔つきに変わった。