鍵盤になりたくて



ピアノマンが深呼吸してからすぐに指を動かしはじめた。


すごい…、あんな風に指が動くなんて。


それが私の感想。





「カッコいいよね。あの人」





友達のその言葉に素直に頷けた。


でも友達の言うカッコいいと私の言うカッコいいの意味はきっと違う。


確かに顔はカッコいい。


明るいとは言えないこの空間でもハッキリと分かる美しいサラサラとした黒髪に、その前髪から見えるキリッとした瞳。


鼻筋も通っていて唇はぷっくらしてとてもセクシーだ。


‘眉目秀麗’


その言葉はこのピアノマンにあるのではと思うほど。


けれど、私が惹かれたのはその顔ではない。


グランドピアノを操るその指先にカッコいい――、素敵だと思ったんだ。



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