巡り合いの中で

 彼女達の質問に、アリエルはちょっと困ったような表情を浮かべてしまう。

 彼女達は信頼しているが、アリエルが耳にしている内容の多くはプライベートに関わることも含まれているので、言うに言えない。

 しかし仲間達は期待しているので、当たり障りのない内容で話す。

 アリエルの話に、仲間達は一喜一憂する。

 時に黄色い悲鳴を上げ、騒ぎ出す。

「あー、その場にいたい」

「やっぱり、生っていいわね」

「生?」

「アリエルも此方の世界に慣れてきたからわかると思うけど、多くの情報が簡単に手にいれられるじゃない。それはそれで面白かったりするけど、一番面白いのって立ち聞きなのよ」

 その意見に同調するように、アリエル以外が頷く。

 イシュバールもアリエルが暮らしていた世界のように話題に事欠かないが、いかんせん長の息子であるセネリオがあの調子。

 恋愛の「れ」の字も無く、其方の方面の話題は一切ない。

 お見合いが行われてもボイコットし、尚且つ何処かに逃げライアスが捜しに行く始末。

 だから上の者の色恋沙汰より、同年代――特に同僚の恋愛話の方が、何倍も盛り上がるという。

「で、アリエルも式に行くでしょ」

「いいの?」

「いいに決まっているじゃない」

「でも……」

「遠慮しないの。結婚式って女の子の憧れなんだから、見ておいて損はないわよ。だから、行こう」

「そうそう。未来の旦那様と出会った時の為に……ね」

 何か言いたそうな雰囲気であったが、彼女達は決してそのことを口に出そうとはしない。

 勿論、アリエルがセネリオといい雰囲気にあることは知っており、陰でこっそりと応援している。

 地位のある者は「イシュバールの未来の為に」と言っているが、彼女達の場合は違う。

 仲間が幸せになってくれるのが第一。

 だからこそ結婚が決まった仲間を心から祝福し、温かい言葉を送る。

 このまま上手くいって、二人が結婚してくれたら――と考えるが、いかせん相手が相手なので一筋縄ではいかない。

 それでも周囲が期待しているのは、似合いの二人に見えるからだ。

 それにこのことを耳にしているアゼルが何も言わないのは、黙認しているからだろう。

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