巡り合いの中で
「あの方は、長(エドナ)のご子息です」
「エドナ?」
「古い言葉で〈長〉という意味です」
「王族はいらっしゃらないと、聞きました」
「私達イシュバールの民には、王族は存在していません。長を頂点に、統率が取れています」
凛とした口調で語るセリナに圧倒されたのか、アリエルは頷くことしかできなかった。
説明では王族はいないと言っているが、アリエルの世界に当て嵌めるとセネリオは俗に言う王子様に当たる。
そのような人物が自ら尋問を行っているのだから、不思議で仕方がない。
普通の王子様と違う。
そのように考えていると、セリナはアリエルの思考を読んだのか適切な言葉を返していく。
「仕事をなさっているからです」
「で、ですが……」
「おかしいですか?」
「普通、上に立つ者は下の者を統治し――」
「貴女がどのような世界で暮らしていたか存じませんが、イシュバールではこれが普通です」
セリナの話ではセネリオは多くの科学者に混じって研究と実験を行い、使命の依頼があればその場所に赴き仕事をこなしている。
アリエルが知る王族は自ら仕事をすることはなく、国を平和に統治している。
それに公の行事の時以外、滅多に人前に姿を現すことはしない。
変わっている。
そのように思えなくもないが、スカート丈の件といい、自分はとんでもない場所にいると身体を微かに震わす。
「また、会えますか?」
「それについては、なんとも……」
何処か突き放す言い方をすると、セリナは再び歩き出す。
急に歩き出したセリナに置いて行かれては迷子になってしまうと、アリエルは彼女の後に続く。
その途中、アリエルが一番驚くことが発生する。
それは綺麗に磨かれた窓の外を見た時で、理解し難い光景に頭が真っ白になってしまう。
幾重にも建ち並ぶ建物は、全て見たこともないほどの高さを誇っている。
彼女が暮らしていた城も相当の高さを誇っていたが、これらとは比べられないほど小さい。
また見慣れた石造りの建造物というわけではなく、一体どのような鉱石を使って建てられているのかと悩む。