不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
「山川、萌香さんも車にお連れしなさい」


山川さんに両肩を掴まれた私は、そのまま車まで連れていかれた。

とても抵抗なんてできない。私は素直に従って、後部座席に乗りこむ。

すでにシートに座っていた卓巳君が目を見開いた。


「おいっ! 彼女は関係ないだろっ」


助手席に乗りこんだ和美さんはシートベルトを締めながら振り返った。そして口角を上げて微笑む。


「私を怒らせたらどうなるか、思い知らせてあげる」


和美、さん……? 

以前会った時とまるでちがう彼女の雰囲気に、私の背筋はゾクリとした。


「くそぉ……」


隣に座っている卓巳君は、うなだれて頭をガシガシと掻いている。


「卓巳君……」


泣きそうになって震える声でつぶやくと、「大丈夫だから」と卓巳君が私の手を握りしめてくれた。

その瞬間、車が動きだした。



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