レンタルな関係。

駅に着いて。

 
カエルと共に改札を抜けると。

 
キヨスクの壁に寄りかかって立つ流川発見。



「なんか…」


 
カッコいい、と思ってしまう私がいますけど。

 
立ち姿が、回りに同じように立っている男子より、明らかに…いい。

 
いけない、いけない。

 
見とれてどうするっ。



「流川直人っ」 


 
声をかけて小走りで近付けば。



「う…」


 
眉をつり上げて歪むその顔。



「な…なんだよ、お前」


「なんだよって。迎えにきてくれたんでしょ」


「いやそうじゃなくて。脱力したミドリの…それはなんだ」


 
流川が指差すのは。



「あ」


 
カエル。



「グッタリしてるぞ、そいつ」


「いや、生き物じゃないから」


「買ったのか」


「まさか。誕生日のプレゼントでさ。もらっちゃって。いや~電車のなか、恥ずかしかった」


 
キヨスクの前。

 
やっぱり注目される私たち。



「とにかく行くぞっ」


 
流川は私の腕をつかんで。

 
足早に駅を出た。



夜になってもまだまだ暑い、アパートへ続く道の上。


流川とふたり。カエル一匹。



「お前、よくこんなの連れて電車に乗ってこれたな」



巨大カエルを肩に背負った流川は、感心するように言った。



「バイト先に置いておくわけにもいかないし。まあ、よく見れば可愛いし」


「そうか?」



流川は、肩にかけられて脱力してるカエルのおしりを撫でている。


手足をダラリと垂らしたカエルは、気持ち良さそうにも見える。


< 122 / 314 >

この作品をシェア

pagetop