レンタルな関係。
 
 流川は。

 そんな私に。

 ぽつんぽつんと声をかける。


 そんな押し問答みたいな時間が流れて。


「もしかして… 何かあったのか?」


 低い声のトーンがさらに落ちて。

 心配する流川の顔が浮かぶ。


「うん」


 そんな問いかけにも。

 同じようにしか答えられない私。


 でもこれじゃ…

 何かあった、の返事だよな。


「何だよ、何があったんだよ」

「…いろいろ」

「いろいろって。それじゃ分かんねーって言ってるだろ」

「なんかさ、いろいろあったよ、ホント。流川がいなくなってから。たった三日のうちにさ」

「…そう」

「うん」


 流川は。

 私と要くんのあいだに起こったことも、

 もしかしたら、気づいてるかもしれない。


 あの日、ケガをして、酔っ払って帰ってきた流川。

 要くんと話をしていた流川。

 そのあと、私と要くんとのあいだに何かあったなんてこと、

 気づいてないはず、ない。


「で、なに?」


 ぶっきらぼうに。

 それでも、心配の声色はぬぐえてない流川の声は。


「あのさ…」


 私のココロに、ちくりと刺さって。


「今さ、駅にいるんだ、私」

「駅? で?」

「オネエマンの店の帰りなの」

「……は?」


 驚いた感じの流川は。


「なんだよ、オネエマンって。まさかお前、一人であの店に行ったのか?」

「うん。そう」

「なんで… もしかしてこの前でハマったのか、お前」

「んなわけないじゃん」

「じゃ、なんだよ。わざわざあの店に行くなんて」

「番号が…」

「は?」

「流川の番号がわかんなくなっちゃって。連絡とりたくて」

「…話が見えねーんだけど」

「あのね、」


 私は。

 少し調子の戻ってきた気持ちに後押しされるように。


 今夜のことを、そして流川が出て行ってからのことを。

 少しづつ、話した。





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