レンタルな関係。

「流川…」

「ごめんな」


 真っ直ぐな目は。

 私のココロを、素直に突いた。


「も、もういいよ」


 先に視線をそらしたのは私で。

 膝の上に組んだ手をもじもじ動かして。


「あのときさ、」

「うん?」

「気、つかってくれたんでしょ?」

「……」

「要くんに… 会ったんだもんね」

「……」

「しかも殴られたんだもんね」

「…すげー女だったな、あれは」

「ぶ」

「笑うなよ。かなりの衝撃だったんだぞ」

「グラスだもんね」

「ありえねーだろ」

「ぷぷ」


 流川は、黒髪をかきあげてる。

 口元に、まだ薄っすら傷が残ってて。


「私のほうこそ、ごめん。っていうか、ありがと」


 それが、

 言いたかった。

 
 “傷つけるようなこと、言えるわけねーだろ”

 “じゃなきゃ、隠し通せ”


 流川が要くんに言ってくれたこと。

 どういう気持ちで言ったのか。


 …それは、聞かなくていっか。


 それより、もうひとつ。


「あのさ、」

「ん?」

「なか…な、な、なかっ」

「なか?」

「なかっ、仲直りっ」

「は?」

「仲直りってことにしようとかなんとか思ったりしてみたり」

「…日本語で話せよ」


 また口が…


「仲直りっ! ってことで!」

「……」

「そういうことでっ!!」


 ふう。

 なんでこんな単純な言葉、うまく言えないんだろ。

 言えたけど。


 流川は、少し黙って。

 
 それから。


「顔赤くして言うセリフか? それ」


 笑って。


「まあ、そういうことにしとくか」


 私の頬に、大きな手を添えて。


「これからどうするよ?」



 ――言った。




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