レンタルな関係。
 
 そりゃあ、冷静になると。

 駅前の、この人ごみ。

 こちらの様子を気にするような、

 あちこちからの視線。

 ひそひそ話。

 
 …たしかに、恥ずかしいけど。


 どうせしてくれるなら…

 突然奪っちゃうんなら…


 もうちょっとさ、こう…

 流川のセリフじゃないけど、味わえるくらいの…さ。

 
 その…

 流川とのキスは初めてなんだし?


 もうちょっと甘めの…

 期待しちゃうじゃん。



「はぁ」


 なんだかチカラが抜けて。

 緊張から解放されたからなおさら。

 ため息なんて出てしまって。


「キスのあとにため息はねーだろ。自分からねだっといて」


 流川の声。

 少し、あきれてて。


「だってさ…まあ、いいよ。うん。なんでもない」


 答えれば。


「短い、とか言いたいんだろ」




 

 エ…!! Σ(ロ゚ ノ)ノ

 


「なんでわかるの?」

「やっぱりな。言ってみただけだ。顔に出るからすぐわかる」

「う」


 ハメられた。


「もうもうもうもうっ!!」


 腕をふり、叫ぶ私に。


「だから。すぐ興奮すんなって」


 苦笑して。

 
 く~~! ムカつく!


「言ったろ? 次までには唇の荒れ、治しとけ。オネエマンのほうがよっぽどちゃんと手入れしてるぞ」


 …オネエマンって!

 お、思い出した、らぶりー留美。

 テカテカの唇。

 たしかに、キレイだ。そこだけはっ!


 くそくそくそっ!

 

 ふふん、笑う流川。

 
 慣れたけどっ。

 その笑いにもっ。

 
 でもやっぱり、ここらで一発、

 ほっぺた叩くくらいのことしてもいーですか?!

 
 コイツに、

 言葉じゃ、勝てませんからっ。





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