あなたのために。-光と影-

死ぬのなら





朦朧とする意識の中、声が聞こえた。




「…おい。ほんとにこいつを攫えば、蓮条楓は来るんだろうな?」


「…当然でしょ。
ずっと楓様の家から出てないのよ?
つまりこいつは、楓様のお気に入り。
お気に入りが殺されそうになれば、それを阻止するのは目に見えてるわ」




この女の声、聞いたことある。




男の方は確か私を殴った時に聞こえた声。




そうだ。
私は奴の檻から逃げ出して、篠と弥生と合流したら襲われて……




「…っ!」




全てを思い出し、意識が戻る。
まずは自分の体を確認すると、手は背中で拘束され、足は縄で一纏めに縛られている。




「おや、気付かれましたか?黒百合さん」




私の意識が戻ったことに気付いた男が近付いてきた。




この声は最初に聞いた声。
確か、弥生の頭を金属バットで殴った奴。




敬語で優しそうな顔立ちをしているけど、目は死んだように冷酷。
簡単に人を殺せる、という目をしている。




「やっぱ意識がある方が美人だな。
さすがは人気No.1のキャバ嬢。
蓮条楓を殺したら、こいつは好きにしていいんだろ?」




こいつはきっと私を殴った男。
さっきの冷酷男とは違い、ヤクザ感が出ている。




ヘボい暴走族でよくいそうな顔。




にしてもこの男達は会ったことがない。
それなのに、どうして私のことを知っているの?




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