あなたのために。-光と影-




「……小夜、ちゃん?」




ゆっくりと、でも確かに私の名前を呼ぶその声は大人っぽくなった外見とは違い全く変わってない。




ああ、この声。
汚れた私を洗い流してくれるような透き通った声。




ずっと聞いてなかったからか、目の前が潤んで視界がボヤける。




「日向。来るの遅くなってごめんね」




ゆっくりと日向に近づけば、日向の目にも今までの思いが溢れている。




両手を広げた日向に吸い込まれるように私は日向を抱き締めた。




私の背に回る弱々しい日向の腕。
それが私にはとても心強くて。




そして日向は病室に入るといつも言う言葉をくれた。




「…小夜ちゃん、おかえり」


「…ただいま…ただいま、日向」




この言葉を聞いた瞬間に目に溜まっていた思いが頬を伝って流れ落ちた。




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