瞬き

高校受験と違って、大学受験はいろいろと大変なんだから。


わたしに言い聞かす母の主張は無視した。


おもむろに放置したスマホを握る。待ち受け画面は碧く澄みきった空。これを目にするたび、姉と彼のことを思い出させてくれるから、気に入っている。サイトから漁って見つけたものではなく、彼が撮った写真で姉に送り付けたものだから、余計に気持ちが落ち着かない。


ヴヴ。
ラインの通知が二度鳴った。


表示される名前と文字の羅列を数秒見つめて、玄関に走る。待ち構えてた母よりも行動は素早かった。扉が重たく外の世界へ繋がると、見覚えのあるシルエットが飛び込んだ。



「お姉ちゃん、おかえり」

「ただいま」



レモン色のワンピースに白のカーディガンを羽織った姉を出迎えた。大学の春休みを利用して帰郷したのだ。まだパジャマから着替えてないわたしに、姉は可愛らしく微笑んだ。



「花音ちゃん、もしかして寝てた?」

「うぐっ!ううん!さっき起きたところだよ」



苦笑いで誤魔化した。姉のキャリーバッグを階段の隅まで移動させる。二つ上の姉はつい先日まで、高校生だったのに、すっかり大人の女性になった。


緑色の双眸が懐かしそうに揺れる。艶のある黒髪は三つ編みに結っており、肩の下でくるんと毛先が内巻きになってた。

< 3 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop