大好きなんです
「顔、真っ赤ですね」
くすくすと霧谷くんの笑い声があたしの耳をくすぐる。
「口、開けて」
「く、ち……?」
どうして?という疑問の言葉は霧谷くんの唇に塞がれて溶けていった。
「んんっ……」
脳の奧までくらくらするような霧谷くんの深いキス。
力が、抜ける……
酸素が足りず苦しくなったあたしに気づいたのか、霧谷くんの唇が離れた。
その瞬間力が入らず、あたしはへなへなと床に座りこんでしまった。
うぅー……恥ずかしい。
「大丈夫ですか?」
座ってしまったあたしの目線に合わせるように、霧谷くんもしゃがみこむ。
「萌にはちょっとハードル高かったですか?」
な、なんか、霧谷くんいつもよりちょっとだけ黒い気がする……
しかもいつの間にか萌って、な、名前!
あ、いや。さっきも一回だけ呼ばれたけど……
「萌」
「は、い…」
真っ直ぐな霧谷くんの視線にドキドキする。
「僕と、付き合ってくれますか?」
微笑みながらそっと、霧谷くんはあたしに手を差し伸べた。
「っ、はい!!」
あたしは満面の笑顔で手をとり、そのままぎゅっ、と霧谷くんに抱き締められる。
「大好きです。霧谷くん」
「僕もです」
自然に目があって、あたしは目を閉じた。
ガラッ―――
「おーい。流ー帰る、ぞ……」
…………え?
ギギギ、と顔を扉に向けるとそこには驚いた顔をした峰くんがいた。
「あ、わり」
たっぷり5秒はあたしと霧谷くんを見て、最後はにやりと口元を歪めて峰くんは教室の扉を閉めた。
「っ、きゃあぁぁーーっ!!」
「萌、うるさいですよ」
Fin.