大っ嫌いにさよならを
離れていた距離にさよなら
 〈 1 〉

 薄ぼけた空へ鳥が飛んでいく。俺はそれを目で追って、上を見上げた。

 棒つきの飴を食べている口の中は、いちご味の甘さに支配されていた。

 まだ午後四時という早い時刻に帰っている俺は、言わずもがな「帰宅部」に属す高校生だ。

 高校二年の二学期、文化祭や中間考査、修学旅行…と立て続けの行事が終わり、落ち着いてきた秋。

 ついこの間、入学式を終えたと思っていればもうすぐ高校三年になるのだ。

「はぁーあ、ずっと高校生ならいいのに」

と、呟いたところで、同じクラスの女子たちも似たようなことを言っているのを思い出した。

 みんな、思うことは一緒なんだな。

 俺は形が残ったままの飴をがりがりと噛んで、棒だけになったそれを、近くの公園に置かれていたゴミ箱に律儀に捨てた。

 さっさと帰ってやりかけのゲームでもしようと歩き出した時、秋の心地よい風に公園のブランコが少し揺れたのが見えた。

 その公園はブランコと砂場しかない寂れたもので、子供が遊んでいる姿はない。

 ボール遊びが狭さのせいで禁止されていることもあるので、それは仕方のないことだろう。

 だけど、俺はよくこの公園で遊んでいた記憶がある。…あんまり思い出したくはないけれど。

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