無口な上司の甘い罠

★婚約指輪は誰のもの?

「・・・で?そんなにご機嫌な顔なんだ」

「・・・何が?・・・意味、分かんないんですけど」


…朝、私の隣に座った隆盛が、

私の手元を見て、いきなりそう言った。

私は訳が分からず眉間にしわを寄せる。


「それ、部長から貰ったのか?」

「…ぁ」

キーボードに置かれた手をいきなり掴んだ隆盛は、

私に右薬指にはめられたダイヤのリングをそっと掴む。


「何で、右なんだよ」

「…左指はまだ空けておけって。…結婚…指輪が…入るからって」


恥ずかしくなってきてどんどん声は小さくなっていく。

そんな私を見て、隆盛は困ったように笑って、デコピンした。


「痛いっ!」

私は咄嗟におでこを抑える。


「昨日はピーピー泣いてたくせに」

「…心配かけてゴメン」


「幸せそうな顔しちゃって」

「・・・ホント、ゴメン」


「部長から奪うチャンスだと思ったのにさ」

「?!」

隆盛の言葉に驚く。
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