春のこころ


「好き」


伝えるしかない。この気持ち全部。
怖がってばっかりで何も言わないのは簡単だった。でも、その分後悔も大きかった。

だから、もしだめでも、未来のわたしが後悔しないように。


「朝奈のことが好き」


こんなエレベーターのすぐそばの、ロマンの欠片もないような場所で告白するなんて想像もしなかった。全然格好のつかない告白。

開いてる窓から、風まで吹いて少し寒いし。

でも、そんなことはどうでもいい。伝えたい気持ちがあれば。
どこで告白したって、わたしの気持ちが変わるわけじゃないんだ。


「桃野……えー、あの、」

「……あはっ、朝奈の顔真っ赤だ」


返事がどうだとか、怖かったのに。言ってしまうと、何だかとても清々しかった。

朝奈はまさか告白されるなんて思っていなかったのか、耳まで赤くなっている。隠そうにも、隠しきれないほど真っ赤だ。


「だって、まさか告られるとは思ってなかったから」

「うん。だよね」

「そういう桃野の顔も真っ赤」


ああ、ほらまた。そんな笑顔見せちゃって。
これ以上好きにさせないでよ。


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