死にたがりの少女をさらった愛することを忘れた狐
6話[なまえ]

名前を捨てろと言われて

それを拒否した次の日から

私の体調は崩れていった

「いづみ様!お食事取ってください!」

椿君が持って来てくれる食事すらまともに取れない

吟華さんはあの日から帰ってきてない

「お水、欲しいな」

辛うじて飲めるのはお水だけで

なんとか口に含み飲み込む

あ、このまま行けば私死ねるんじゃないかな

吟華さんだって好きにしろって言ってたし

名前を捨てることは死ぬよりも苦しい

わたしは人間で居たい

嫌われてもいい

存在がなくてもいい

別の誰かになって生かされるなんて

耐えられないよ

その日の夜中、高熱にうなされた



「いづみ、おはよう」

あれ、私帰ってきたんだ

人間界に

「待ってたんだよ?ずっと会えなくて寂しかった」

「お、元気になったんじゃん!」

私、こんなに友達に慕われてたっけ

「はい、これ休んでた時のノート」

みんな優しい

あの時の記憶が嘘みたい・・・

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